女性弁護士のきらきらブログ

2012年10月05日 | 中溝明子

ネット上のサービス提供と消費者契約法

近年、インターネットは急速に普及し、様々なネット上のサービスが提供されています。

それは一種のコミュニティを形成し、社会的にも認知されるようになってきました。

けれども、そういった多くのサービスは、

提供する会社が一方的にサービス内容の変更や提供の停止・中止ができるという利用規約が設定されています。

 

そんな利用規約に基づくサービスの利用停止や中止が行われた場合、

それはやむを得ないことなのでしょうか?

消費者はそれをそのまま受け入れざるを得ないのか?

ちょっと、消費者契約法の観点から考えてみました。

 

消費者契約法10条には「消費者の利益を一方に害する条項の無効」が定められています。

それは

① 消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項が

② 民法や商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合と比べて

信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害する場合には

契約が無効になるという規定です。

 

何を持って信義誠実なのかという抽象的な議論をするのではなく、

他の関係法令との比較をしなさいよということですね。

 

で、ネット上のサービス、例えばアバターなどのサービスなんかについては、

どんな風に考えましょう?

一つに、

民法の「期限の定めのない契約関係」に関する「解約申し入れ期間の」規定が参考になるでしょう。

 

賃貸借契約の場合(民法617条1項)

・土地 1年

・建物 3ヶ月

・動産や貸席 1日

(なお、収穫の季節がある土地の賃貸借ならば、その季節の後次の耕作に着するする前

 

雇用契約の場合は2週間(民法627条1項)

 

委任契約の場合はいつでも(民法651条1項)

 

ネット上のサービス提供がどれと類似すると考えるか、難しいところですが、

「場」の提供と類似と考えるならば、

「建物」の賃貸借契約として「3ヶ月」が一つの目安になるのではないかと思われます。

 

けれども、これらの解約申し入れ期間というのは、

他の賃借物や雇用先などを見つけるために要する合理的な期間とも言えるわけですから、

ネット上のサービス提供が完全に中止・停止となり、

一切そのサービスの提供が受けられなくなる場合、

つまり本来的な意味における代替性がないサービス提供の中止・停止の場合には

別の考慮も必要なのではないかと思います。

 

また、ネットユーザーが全国、いや世界各国に広がっていることも考えると、

どうやってこの解約申し入れ、すなわちサービス提供中止・停止の告知をするか

という問題もありますよね。

 

そんなネット特有の事情を考えるならば・・・・

一方的なサービス提供中止・停止が有効といえるためには、

例えば、

① 告知方法が適切であったか?

② 告知からサービス提供中止・停止までの期間は合理的であるといえるか?

③ 代替性があるか?

④ 代替性がない場合には、それを補う何らかの代替的な措置が講じられたか?

といった要素を検討しなければならないのではないかと思います。

 

このような問題については、まだ議論が深まっておらず、

あくまで私見ではありますが、

この種の議論の一石になればと思います。

 

 

 

 

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